キャンセルされた街の案内
2009
新潮社
新潮社
働きながら小説を書いている男の元に、無職の兄が転がり込んでくる。兄とのふとした会話から、男の脳裏に故郷長崎にある廃墟の島・軍艦島で案内をしていた幼き日の思い出が浮かぶ表題作。絶対にいやな思いをしない場所、といって連れていかれたパークハイアット東京での完璧な時間(『台風一過』)。極寒のソウル、お粥屋ですれ違う日本人の女と韓国人の男(『零下五度』)。「短編小説は交差点のようなもの、ここでの出会い頭のようなものを小説にしていく」と著者自ら語るように、ひとつの場所での景色から始まる物語たちで構成。吉田修一初めての短編集。
(新潮社 F)