T 監督と吉田さんはいつもこんな感じなんですか? 
Y そうですね。もう知り合って2年以上になりますけど、監督はいつも礼儀正しくって、いつまで経っても接し方が崩れていかないんですよ。
O そうね、いつも礼儀正しいわね。
Y なんでそんなに礼儀正しいんですか?
L どうなんだろう。例えば家でも祖父母には立って挨拶してはいけないとか、朝鮮学校でもひとつ上の先輩にもきちんとお辞儀をして挨拶しろっていわれましたから、環境ですかね? 先輩に挨拶するときは、学生服のホックをきちんと閉めていなくちゃいけないんですよ。それが分かるように襟元を押さえて挨拶するんです。
Y 自分でいうのもアレですけど、僕もわりと礼儀正しい方なんですよ。その方が物事もスムーズに運ぶじゃないですか? でも高橋源一郎さんに二度目に会ったときに「お久しぶりです!」って丁寧に頭下げたら、「あ〜、そうだ、吉田くんって礼儀正しかったんだよねぇ」ってちょっと面倒くさそうにいわれて、さすがにあのときは、「やっぱりこの人は手強い」って思いましたけどね(笑)。
L やっぱり自然とちゃんとしませんか? 特に年上の人の前だと。
Y でもだんだん崩れて来ちゃいません? 監督は全然変わらないですよね。あ、これ今後も崩さないでください、っていう意思表示ですから(笑)。
T 共通点は礼儀正しさって、なんだかある意味すごいですねぇ。他には何かありますか?
Y いや、あまりないですよ。監督みたいな人には、今まで会ったことがなかったです。
O ニュータイプなんだ。
Y そうですね。でも環境が礼儀正しくさせるっていうのは分かる気がします。韓国行ったときも、向こうの出版社の皆さん、礼儀正しいですもん。礼儀正しくて、でも一緒に酒を飲み始めると、もう肩組んで(笑)。ある意味、理想的です。
T 吉田さん、ANAの機内誌でもNYの滞在のエッセイなのに韓国から来た観光客のこと書いていましたよね。
L へぇ、どんな話ですか?
Y セントラルパークで、礼儀正しい韓国人の若者を見たって話なんですけど。何もNYまで行って、韓国の若者のことを書くこともないですよね?(笑)
L そういえば『悪人』の舞台になった大瀬崎灯台の話、読みましたよ。思わず持ち帰りました。初めて機内誌をお持ち帰りです。
Y 本当ですか? 『悪人』の旅は二回書いているんですよ。やっぱり小説家のくせに脚本にまで手を出しているので、責任重大じゃないですか。少しでもPR になったらいいなって。そういえば、自分もPRはあまり得意な方じゃないですけど、監督も今まではあまり積極的じゃなかったって聞きました。けれど今回は本当に精力的ですよね。その姿を見て妻夫木さんが「監督、大人になった!」って。
一同 笑
Y あと僕がいつも思うのは、監督って基本的に誰に対しても同じ接し方だということ。撮影現場に行ったときに見たんですけど、毎晩撮影が終わるとスタッフのひとりひとりにお疲れ様って声をかけていて…。それを見たときこんないい人いるはずない!って思いましたもん(笑)。
L 僕の現場はとってもキツイし、長丁場だったりする。そんな中で、「これ何のためにやっているんだろう」って考えたらむなしくなるじゃないですか。すべて良い作品に通じているって思って動かなくちゃやっていられない、って部分もあるんですよ。
Y 例えば偉い人が来ているとかいないとか、人が多いとか少ないとか、そういうことで監督の態度は決して変わらないんですよね。ウラオモテがない。
L それもやっぱり、作品のためですよ。スタッフたちが今携わっているこの瞬間がより良い作品へと繋がっていると信じることが出来れば、自然とやっていることに意義を感じてもらえるようになるじゃないですか。つらいことの数々は心身ともにしんどくなっていくだけですし。役者やスタッフに、この苦労はすべて良い作品のためだという方向性を指し示すのが、自分の役目なんです。
T いや、口でそういうのは簡単ですけれど、態度で示すのはすごく難しいですよね。
YO そうそう。
T 監督の映画原体験ってなんですか?
L ETとかスター・ウォーズとかですね。ETは劇場がいっぱいで、階段に腰掛けて観たのを覚えています。小学生の時だったかな。号泣でしたよ。
Y 監督でも、子供の頃は泣いてたんだ…。
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