国宝

2018
朝日新聞出版
あらすじ
梨園と極道、生い立ちも才能も違う若き二人の役者が芸の道に青春を捧げていく。
(疾風怒涛の上巻 青春篇)

芝居だけに生きてきた男たち命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく。
(感涙必至の下巻 花道篇)

物語の舞台は、長崎から大阪、そして高度成長後の東京へ。
喜久雄と俊介、二人の若き才能は、一門の芸と血統を守り抜こうと舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜けていくが――
血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り、数多の歓喜と絶望が、役者たちの芸道に陰影を与え二人の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。
担当編集者ここだけの話
「『悪人』から十年、作家生活二十周年の節目に更なる大きな作品を」と切望してやまない担当者は、「大谷崎『細雪』と伍するような」と何ともぼんやりした話をしていたのでございます。ある年の正月、都内のホテルで会食する機会を得た折でございましょうか。親しい映画監督と、新年の席でひと頻り話題となりましたのが歌舞伎の世界でございました。それから取材を重ねること数年、いつも編集者の想像など軽々と超えていくのでございます。四代目中村鴈治郎さんからの知遇を得ながら、朝日新聞で連載がはじまりましたのが二〇一七年元日、小説の舞台もまた一九六四年の元日から幕を開けたのでありました。物語の終盤には、主人公の喜久雄について作品の要となります人物がこんなことを語 っております。「その役者の芝居見るとな、正月迎えたような気分になんねん」。そして刊行から半年、みごと芸術選奨受賞も決まり、事の始まりから終わりまで、なんとも目出度い、「正月」付く(賞が続く)作品が生まれたのでございます。


(朝日新聞出版 I)

『国宝』公式サイト

『国宝』

吉田 修一
定価:1,620円(税込)
朝日新聞出版