さよなら渓谷

2008
新潮社
幼児殺害事件の捜査線上にのぼる女の隣家に暮らす夫婦。容疑者が隣の男との関係を匂わす発言をしたことから、警察に目をつけられるようになってしまう。しかも、妻は容疑者の告白を裏付けるような証言をするのだ。この些細な出来事は、次第に大きな秘密を露呈することとなる。幼児殺害事件を追っていたジャーナリストは、やがて15年前に起きたひとつの事件にたどり着く。そこには信じられないような真実があったのだった。
『悪人』に続いて、悪い男が主人公の本作。ですが、どうしてもこの男を憎めない。というか、読みすすむにしたがって、とても愛しくなってしまうんです。「どこまでも不幸になるために、私たちは一緒にいなくちゃいけない」というセリフに、「愛っていうのは、一体何なんだろう」と考えずにはいられなくなる小説です。ラストシーンに何カ所も赤が入って、校了寸前にも「やっぱりあの部分の語尾、こう変えてください」とFAXをいただいたのをよく覚えています。読後必ずは「あー、小説読んだな」という満足感に浸れます。『悪人』で感動した人には、絶対にお勧め!

(新潮社 G)

『さよなら渓谷』

吉田 修一  
定価:420円(税込)
新潮社

『さよなら渓谷』
[単行本]

吉田 修一  
定価:1,470円(税込)
新潮社
TW

『再見溪谷』

吉田 修一  
麥田
books.com.tw
KR

『사요나라 사요나라』

요시다 슈이치
노블마인
kyobobook.co.kr