空の冒険

2010
木楽舎
ANAグループ機内誌『翼の王国』の連載をまとめた『あの空の下で』に続く、“空”シリーズ第二弾。映画のタイトルを冠にしたショートストーリーと、自身の旅の記憶を綴った二部構成。一目惚れした香港人のガールフレンドの帰省に付き合い、一族で食事をいただく『恋人たちの食卓』、同僚に紹介された女性との恋の行方を、気にしたこともなかった星占いにたずねてみる『桜桃の味』。派手でドラマチックな事件などひとつも起こらない。路上や食卓、職場。ありきなりなロケーションで、足を止めたくなる出来事たちを閉じ込める。ブータン、ニューヨーク、台北、自身の旅先での風景も、ショートストーリーと変わらない。双子のようなエッセイと小説がひとつの作品集に収められている。
普通の人たちの日常をドラマティックで切なく描くストーリー展開が本当に見事です。原稿をいただいてレイアウトし、印刷して本にするのでその間に何度も読むのですが、作品の中のシーンや人々が自分の記憶そのものであるかのように懐かしく、愛しくなります。研ぎ澄まされた言葉が心に染み入り、作品の中の「日常」が自分の「日常」を浸食していくかのようなリアリティ。読むたびにさまざまな美しさが万華鏡のように輝き出します。

(木楽舎 I)

『空の冒険』

吉田 修一  
定価:450円(税込)
集英社文庫

『空の冒険』
[単行本]

吉田 修一  
定価:1,260円(税込)
木楽舎
KR

『하늘 모험』

요시다 슈이치  
은행나무
book.naver.com
TW

『天空的冒險』

吉田修一
麥田
books.com.tw